読みやすい楽譜を用意する。限られた作業時間を乗り切る。やりたかった編曲を始める。全ての吹奏楽指導者の皆様へ向けた、Finale活用術のご紹介です。
Vol.2 リクエストに応えるため。アレンジのサポートに
団員からのリクエスト曲が市販されていなかったり、部活動の編成に合うアレンジではなかったり、と編曲が求められる機会は多いものです。例えば、人数が足りず他の楽器で補強したり、特殊楽器の代役が必要であったりと、他のパート(楽器)にフレーズを移動する場合にやっかいなのが、移調楽器への移動や、演奏者の習熟度に合わせた音域調整などです。
そんな場合もFinaleで効率的に作業をおこなえます。また、音楽の先生でも吹奏楽は専門外といった場合も、ちょっと面倒な吹奏楽特有の部分はFinaleが強力にサポートしてくれます。
一度Finaleへ入力すれば、手書きと異なり、そこから先は編集の可能性が広がります。別記事「楽器別フィナーレ活用術VOL.3:管楽器編」には高速ステップ入力を始めとしたFinaleならではの快適な音符入力方法をご紹介していますので、併せてご参照ください。
ー目次ー
1. 移調楽器の設定:調号や音高に悩むことはありません
2. セットアップ・ウィザードなら設定済み五線を自動処理
3. 移調楽器を実音で表示
4. 演奏可能な音域かを習熟度ごとにチェック
5. まとめ
6. 関連記事リンク集

1. 移調楽器の設定:調号や音高に悩むことはありません

「不在のオーボエ(in C)のソロをソプラノ・サックス(in B♭)で演奏する・・・」よくある光景ですが、Finaleなら移調した譜面を部分的に用意することも簡単です。
右下の図は、ピアノ(in C)の右手パートをトランペット(in B♭)の五線にドラッグ&ドロップでコピーした様子です。トランペット・パートは、スコア・マネージャーで移調楽器として設定済みのため、正しい調号や音高に自動で移調されます。
※Finaleのオンライン・ユーザーマニュアルで、スコア・マネージャーや移調楽器の詳細をご覧いただけます。
2. セットアップ・ウィザードなら設定済み五線を自動処理

移調楽器を設定するには、知識が必要で手間も掛かりますが、セットアップ・ウィザードで作成した五線には必要な設定が自動で反映されます。
管弦楽曲を吹奏楽アレンジにするような大規模な作業でも、吹奏楽フル編成の五線をすぐに用意して作業を始められます。

<移調楽器の設定と作業効果の例>
例えば、アルト・サックスやバリトン・サックスはE♭菅、ソプラノやテナー・サックスはB♭菅ですので、長6度上げ?長3度上げ?さらにオクターブ上げ?と、慣れていないと正しく移調設定するのも難しいものです。
移調方向が上下異なると、演奏がオクターブ変わることになるので意図せぬサウンドになる恐れがありますが、セットアップ・ウィザードなら正しく設定されるので安心です。
右上の図は、管弦楽のストリング・セクション(in C)を吹奏楽のサクソフォーン・セクションに一括でコピー&ペーストしたところです。ドラッグ&ドロップするだけで、サクソフォーンのそれぞれの移調楽器設定に合わせて正しく移調表記されています。
3. 移調楽器を実音で表示

Finaleでは、移調楽器が含まれたスコアを一時的にコンサート・ピッチで表示できます。ピアノで音を確認したい、移調読みは苦手、といった場合には、「移調楽器を実音で表示」に切り替えると便利です。
このようなちょっとした便利な機能も、単純ミスの回避や効率化につながるでしょう。
4. 演奏可能な音域かを習熟度ごとにチェック

管楽器では、演奏者の習熟度によって演奏可能な音域がずいぶん違います。学生バンドではその差は特に顕著でしょう。
「音域外の音符」機能では、初級者〜上級者を設定して、音域外の音符は黄色で表示してくれます。これなら、編曲でパートを割り振ったり、ユニゾンでサウンド補強したりする場合にも、音域に無理がないかを事前チェックすることができます。
こちらは「初級者用」に設定した表示例で、初級者では演奏困難な音域が一目でわかります。なお、「上級者用」に設定を切り替えても黄色のままの場合は楽器の構造上音が出ない可能性があるので要注意です。このように、専門以外の楽器のチェックに役立つかも知れません。
5. まとめ
部活動などでは、年度ごとにパートのサウンドが異なることもしばしば。これらのアレンジ支援機能は、例えば、毎年演奏する校歌を演奏者の習熟度に合わせてアレンジ変更したり、パートの補強や割り当てを変更する際などにも使えます。日頃から楽譜をFinaleファイルとして保存しておけば、作業時間はごく短くて済むことでしょう。
6. 関連記事リンク集
《吹奏楽アレンジのためのFinale活用術》姉妹編
- Vol.1 大会に向けての準備を時短・効率化:編曲や楽曲のカット、パート譜の編集、演奏時間の管理など、吹奏楽ならではの作業におけるFinaleの活用術をご紹介。
- Vol.3 指導や練習と楽譜のよい関係:Finaleを活動に取り込む:複数パート譜の楽譜、五線のサイズや長休符の調整、プレイバック機能の活用など、日ごろの活動にFinaleを取り込む、ちょっとしたヒントやアイディア、便利機能をご紹介。
《吹奏楽に関連したインタビュー記事》
- 小編成の吹奏楽アレンジをFinaleで:例年の部員数わずか10名少々という規模で様々なコンクールにて実績を重ねる仙台城南高等学校・吹奏楽部と、同校に楽曲を提供する作曲家、片岡寛晶氏との仙台-東京間でのコラボレーションの事例をご紹介します。
- 本田 雅人さんインタビュー:ビッグバンドにも力を注ぐ、ジャズ・フュージョン系では日本を代表するウインド楽器プレイヤー、本田雅人氏へのインタビュー記事です。
《楽器別フィナーレ活用術》
- 楽器別フィナーレ活用術VOL.3:管楽器編:各種ミュートやゲシュトップ、グリッサンドなど管楽器独特の奏法指示や記号、楽器ごとの移調設定などをご紹介しています。
- 楽器別フィナーレ活用術VOL.4:打楽器編:音符入力、LR/ストローク表記、ハーフタイム・シャッフルなど連符フレーズの入力、符頭の変更、装飾音符やアーティキュレーションなど、実際の打楽器スコアや教材などを作成するための広範な内容を網羅しています。
《Finale TIPS》※以下、管楽器の楽譜制作に特に役立ちそうなものをピックアップしました。
- TIPS 2. 同じ発想記号を複数のパートに連続複製する方法
- TIPS 3. 入力済みの記号やアーティキュレーションを瞬時に変更する方法
- TIPS 4. ハーモニーからトップ・ノートのみを簡単に抽出する方法
- TIPS 5. 入力済みの音の高さを簡単に変更する方法
- TIPS 6. 記号類だけを他のパートにコピーする方法
- TIPS 8. プレイバック時の臨場感を簡単に調整する方法
- TIPS 9. 複雑なコードネームを入力する際の時短テクニック
- TIPS 10. プレイバック時に、連続する16分音符をシャッフルさせる方法
- TIPS 11. 曲の途中で楽器を変更(持ち替え楽器)する方法
- TIPS 12. 部分的にプレイバックをしてサウンドをチェックする方法
- TIPS 14. 目からウロコのショートカット集「高速ステップ入力編」(Mac版)
《Finaleの基本操作を学べるリソース》
- 譜例で操作方法を検索:Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。
- クイック・レッスン・ムービー:Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。