第5回:櫻井 哲夫さん

 

現場では、Finaleの楽譜が当たり前の時代

櫻井 哲夫
櫻井哲夫(さくらい・てつお)プロフィール

東京生まれ。13歳の時ベース・ギターを弾き始める。慶応義塾大学商学部卒業。1976年〜1989年迄「カシオペア」、 1990年〜1998年迄「JIMSAKU」のメンバーとして活動。グループで全国各地と世界約20ヶ国で公演活動を繰り広げる。1979年レコード・デビュー以来、バンドとソロで合計45枚のCD、7本のライブDVD、4本の教則DVD(VTR)をリリース。1999年以降は、ソロ・アーチストとして精力的に活動中。独特の暖かさと激しさを持ち合わせたオリジナリティー溢れる楽曲とベース・プレイで幅広い音楽活動を行っている。海外活動として、Dennis Chambers, Greg Howeとの "GENTLE HEARTS"、Djavan, Ivan Lins, Rosa Passos, Filo Machado他との "BRASIL CONNECTION"、Bob Jamesのアジアツアーへの参加。その他、Don Grusin, Bill Sharp (SHAKATAK)とのライブ活動、韓国のJack Lee、インドネシアのDewaとのコラボレーション等。国内活動のユニット作品として、野呂一生との"PEGASUS"、日野賢二との"TETSUJINO"、岡崎倫典との"FAR EAST"。サポートとして世良公則 "GUILD 9"、カルロス菅野 "熱帯SuperJam"、本田雅人Band、齊藤ノヴセッション、夏木マリ”GIBIER du MARIE”、舘ひろしにも参加。 またインストラクターとしては、MESAR HAUSと昭和音楽大学で講師活動中。
櫻井哲夫公式ホームページ


Finaleとの出会いは?

僕はMacintosh Plusの頃からのMacユーザーで、シーケンサーで曲作りをしていました。80年代の終わり頃でしたかね、Finaleというすごい楽譜ソフトが出たというので、ニューヨークに行った時に買ってきたんです。箱がすごく大きくて持って帰ってくるのが大変だったのを覚えています(笑)。でも、取説は英語でものすごい分量だし、セッティングはしたもののシンプルなことしかできず、使いこなすまでには至りませんでした。

かなり古くからのユーザーだったのですね。
櫻井 哲夫さん
メーザーハウスので授業の合間にインタビューにお答えいただきました。

Finaleは出た当初から評判でしたからね。このソフトの能力がすばらしいとはわかっていましたが、結局お蔵入りさせちゃったので今思うともったいなかったですね(笑)。その後、97年に日本語版が出たということで買い直して、オリジナルの手書譜を片っ端からFinaleで作っていきました。以前、ボブ・ジェームスさんのアジアツアーでご一緒させていただいた時、Finaleの使い方を教わったりもしましたね。ボブ・ジェームスさんは今73歳ですが、常に新しい方法に興味があってアンテナを立てている人。Finaleなどの新しいツールもどんどん使いこなして本当にすごいなと思います。

櫻井さんは普段どのような楽譜を作られるのですか?

クラシックの楽譜はすべての音が書かれているのが当然ですが、僕らの世界ではそこまでではなくて、曲の進行が示された楽譜の中に、マスターリズム、メロディー、ベースライン、コード、ドラムが必要なところにだけ書かれていて、多くても3段譜で充分です。作った楽譜はライブで使いますので、とにかくページ数を少なくするための工夫をしています。不要な所は省略して、段によって1段譜や2段譜に調整して最大でもA4で4枚までに収めるようにしています。
曲作りのプロセスで言うと、まずスケッチは手書きでやります。それをシーケンスソフトでアレンジしてデモを作り、最終的に完成したものをライブで再現するためにFinaleで楽譜化します。これがメインの使い方ですね。

ライブで使う以外には?

もちろんライブだけでなく、レコーディング用の楽譜、学校で指導する際の教材、セミナーでの配布資料、雑誌の原稿もFinaleで作りますよ。雑誌では自分の曲の作品解説や、奏法解説、特にTAB譜作りに便利ですね。僕らが楽器を始めた頃はTAB譜は使いませんでしたけど、今の人はTAB譜は読めるけど五線は苦手という人も多いですからね。Finaleはもともと楽譜出版のためのソフトだけあって教材作りには使い勝手が抜群にいいです。

あらゆるシーンでFinaleを活用いただいているのですね!
ではFinaleのメリットや、逆に不便に感じられる点は?

やっぱり簡単にコピーできたりアレンジがし易いのが魅力ですね。移調も瞬時にできますし。他のユーザーさん達が便利に感じられていることが僕にとってもメリットですよ。これはデメリットというか当たり前のことですが、パソコンが手元にないと出来ない、というのが不便な点です(笑)。あとは要望に近いことですが、バージョンアップした時に過去のファイルの再現性が不充分で困ってしまうことがあります。

先日のソロライブで使用されていたオケは自作ですか?

いつもは、基本的に全部自分で作りますが、今回は、新しいコルグのシンセを使用したので、シンセの達人に習いながら手伝ってもらいましたよ。DAWソフトを使って、レコーディングした生の素材や打ち込みを織り交ぜて作っています。ハードディスク・レコーディングの時代になってからは、録音データを持ち運べるようになって、スタジオに行かなくてもどこでも編集作業ができるようになりましたから、自宅スタジオに籠ってエンジニア業をやったりしています(笑)。でも、しっかり作品を作るときは、ちゃんとエンジニアさんに頼んで客観的にディレクションするようにしています。

意外に、コンピューターの前に座っている時間が多いようですね。
櫻井哲夫さん
Macユーザー歴27年!Appleの歴史もつぶさに見守って来られた櫻井さん。

意外ですか?もう、“我が人生コンピューターライフ”って感じで、とても多くの時間をコンピューターの前で過ごしていますよ。練習する時もコンピューターを前にやっているくらいです。自分で出来ることはどんどんやっちゃうタチなので、仕事が増えましたよね(笑)。パソコンも音楽ソフトも最近は随分安くなったので、学生さんも普通にカセットレコーダー感覚でDAWを使っていますよね。

学生さんのお話が出ましたが、櫻井さんの教え子さんたちもFinaleは使っていらっしゃるのですか?

いや、そうでもないですね。特にベースなので、あまり楽譜に執着がないっていうか、むしろ楽譜には弱いくらいの生徒さんの方が多いかもしれません。もちろんピアノなど鍵盤の生徒さんはバリバリ読めるでしょうけど。実は僕自身も、他人が書いた楽譜を初見で読みこなして、スピードと正確さを要求されるスタジオワークで経験を積んだ時期が無かったので楽譜に強い方ではないんです。でも、Finaleのような音楽ソフトが一般的になってきたおかげかもしれませんが、音符をびっしり書くアレンジャーさんも増えていますから、教える側としては「楽譜はしっかり読めるようになっておいたほうがいい」と指導はしています。

ライブやレコーディングの現場では、どれくらいFinaleの楽譜が浸透しているのでしょう?

そうですね、プロの写譜屋さんが書いた楽譜はもちろん見やすいですし、Finaleよりもそっちの方が好きという方もいます。でもFinaleで書かれた楽譜も喜ばれますよ。「お、Finaleだ!」という反応です(笑)。以前はJazzフォントを使われることが多かったですが、最近は出版譜用のフォント(Kousaku)も普通に目にしますね。先日も、舘ひろしさんのアルバムのレコーディングに参加した時、サウンドプロデューサーの船山基紀さんが楽譜を全てFinaleで用意されていたのですが、細かい所まで作り込まれた出版クオリティの楽譜が当たり前のように出てくるので、時代は変わったなとつくづく実感しました。以前は当然だった殴り書きのような楽譜はほとんど見られなくなって、現場で「これ何の音?」などと余計な時間をとられることもないし、楽譜に対するストレスがかなり減りましたよね。

最後に、今後のFinaleに望むことがあれば。

ジャズの世界でもビッグバンドの楽譜だときっちり音符が書かれているわけですが、そういうのを得意とするアレンジャーの仕事を見ていると、本当に操作もスピーディーで効率よく作業されているんですよね。僕ももっとFinaleを使いこなさなきゃなと思うわけです。Finaleに望むことと言うと、先ほどもお話に出た旧ファイルを新バージョンで開いても問題がないようにして欲しいのが一つ。それから発想記号ツールのプリセットの内容がクラシック音楽向けで、僕らが使いたいものが入っていなかったりするんですよね。そのあたりを充実していただけるととても嬉しいです。あと、コード・サフィックスも使いたいものがプリセットされていないので自分で作るのですが、設定がとてもややこしい!ここももっとシンプルになるといいなと思います。

発想記号やコードサフィックスの充実については、特典としてライブラリやテンプレートを頒布することで解決することかもしれませんので、ぜひ実現させたいと思います。貴重なご意見ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。これからもFinaleにはお世話になります(笑)

櫻井哲夫 最新ソロアルバム『TALKING BASS』 (KING RECORD/KICJ 641)

「このアルバムで、ベースの音に包まれた美しさを届けたい。たくさんの人がこのアルバムで癒されて欲しい」と語るカシオペアのオリジナル・メンバーとしてデビュー以来30年以上に渡ってトップ・ベーシストの座に君臨し続ける櫻井哲夫。一昨年から取り組んでいるソロ・パフォーマンス・ツアーで試行錯誤を重ね、満を持して発表されたのがこの『TALKING BASS』。オリジナル2 曲に、マイケル・ジャクソンのナンバー「I Can't Help It」とラストを飾る「見上げてごらん夜の星を」では自身の歌声も披露。そして、「Butterfly」ではマーカス・ミラーがゲスト参加している。

01. The Long And Winding Road (John Lennon & Paul McCartney)
02. Donna Lee (Charlie Parker)
03. Butterfly (Herbie Hancock)
04. Sunflower (Henry Mancini)
05. I Wish (Stevie Wonder)
06. I Can't Help It (Susaye Greene/Stevie Wonder)
07. Sailing Alone (櫻井哲夫)
08. Alisa (櫻井哲夫)
09. Stardust (Hoagy Carmichael)
10. 見上げてごらん夜の星を (永六輔/いずみたく)

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関連記事リンク集

 

《プロのFinale活用事例:アーティスト別》

  • 外山和彦氏:作編曲家 “手書き時代はスコアを切り貼りしたり苦労をしたものですが、Finaleを使うことで圧倒的に便利になりましたね。仕事場にはもう五線紙がありませんよ”
  • 吉松 隆氏:作曲家 “我々プロの作曲家にとっては、こと細かい調整ができるという面で、やっぱりFinaleなんですよね。Finaleは、車に例えるとマニュアル車みたいなものなんです”
  • 松本 あすか氏:ピアニスト/作曲家/音楽教育家 “Finaleは楽譜のルールを学習するためのツールにもなっているんだなと思います。楽譜が分かるようになれば、読む時の意識も変わります”
  • 栗山 和樹氏:作編曲家/国立音楽大学教授 “Finaleを使えば「バージョン2」を簡単に作れることは大きなメリットですね。特に作曲面でトライ&エラーを繰り返すような実験授業では、Finaleでデータ化されている素材は必須です”
  • 櫻井 哲夫氏:ベーシスト/作曲家/プロデューサー/音楽教育家 “Finaleの普及で、演奏現場では以前は当然だった殴り書きのような譜面はほとんど見られなくなり、「これ何の音?」などと余計な時間も取られず、譜面に対するストレスがかなり減りました”
  • 紗理氏:ジャズ・シンガー “ヴォーカルだと特に、同じ曲でもその日の気分やライブの演出によって、キーを変えたい時がよくあるんです。そんな時でもクリックひとつで移調できるわけですから、これはものすごく便利です”
  • 赤塚 謙一氏:ジャズ・トランペット奏者、作編曲家 “作る人によってレイアウト、線の太さ、フォントの選び方など好みがあり、手書きのように作った人の「らしさ」が表れます。この辺がFinaleに残されたアナログな良さかも知れません”

《プロのFinale活用事例:テーマ別》

《楽譜作成ソフトウェアの導入メリットを考える》

《Finaleの基本操作を学べるリソース》

  • 譜例で操作方法を検索:Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。
  • クイック・レッスン・ムービー:Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。

 

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