第9回:チャラン・ポ・ランタン小春さん

 

楽譜は自分がやりたいことをやってもらうためのツールです

チャラン・ポ・ランタン小春さん
唄とアコーディオンの姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。アコーディオン奏者であり、作詞/作曲、大道芸、イラスト、執筆などマルチに活動される小春さんへ、ボタンアコーディオンとの出会い、アコーディオンならではの記譜、フィナーレを導入された理由、そして人気YouTube動画の蛇腹談義までをインタビューです。

 


チャラン・ポ・ランタン | プロフィール
チャラン・ポ・ランタン

もも(唄/ 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン/ 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。2009年に結成、2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。バルカン音楽、シャンソンなどをベースに、あらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンドや、サーカス風の独特な世界観で日本のみならず、海外でも活動の範囲を広める。チャラン・ポ・ランタンとしての活動のほか、映画/ドラマへの楽曲提供、演技・CM・声優・イラスト・執筆など活動の範囲は多岐に渡る。2016年に発売の配信シングル「進め、たまに逃げても」がTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマに起用され、大きな反響を呼ぶ。2019年7月17日には、メジャーベストアルバム「いい過去どり」を発売。2020年に入り、5月27日発売の配信シングル「空が晴れたら」を皮切りに【8週連続"宅録"配信シングルリリース】を敢行。2020年10月28日にはニューアルバム「こもりうた」を発売!さらに、2020年12月~2021年7月にかけて「8ヶ月連続ライヴ企画」を敢行中。月1回の"チャランポに関する記念日"にLIVEを届けます。

チャラン・ポ・ランタン公式ウェブサイト
チャラン・ポ・ランタン公式YouTubeチャンネル
小春さん公式Twitter
小春さん公式Instagram
ももさん公式Twitter
ももさん公式Instagram


 

サーカス音楽と出会い、アコーディオンに魅了された
アコーディオンの魅力を語る小春さん
アコーディオンの魅力を語る小春さん
音楽、アコーディオンとの出会いを教えてください。

7歳の時に家族でサーカスを見に行ったのがきっかけです。生演奏のステージで一際目立っていたアコーディオンに魅力を感じました。その年のサンタさんに小さなアコーディオンをプレゼントしてもらい、嬉しくてずっと弾いていました。以降ずっと、アコーディオンにどっぷり浸かっています。

今まで触れてきた音楽のジャンルは?

最初に出会ったのはサーカス音楽です。遊園地で流れているような曲のジャンルですね。民族音楽でヨーロッパのジプシーの移動音楽が原点です。

当時アコーディオンの音が入っているCDを買い漁っていて、「ジプシー系の音楽にはアコーディオンの出番が多い」と気づいたんです。その中で、中学生の時には「クレズマー」というロマ音楽のジャンルに没頭しました。

アコーディオン中心の生活だったんですね。どんな部分に惹かれたのですか?
小春さんの貴重なアコーディオン・コレクション
小春さんの貴重なアコーディオン・コレクション

見た目も音色ももちろんですが、演奏が自分ひとりで完結することに魅力を感じました。左で伴奏、右手でメロディ、両手で伴奏…… 1人でオーケストラのようなことができるんです。

そのため小さい頃から、1人だけでお金を稼ぐ方法をずっと考えていました。絵を描くのも演奏するのも一人が好きだったから。小学生の頃の夢は「ホームレス」だったんですよ。段ボールに住んでアコーディオンで稼げばいいんじゃない?って(笑)

なぜ「鍵盤式」ではなく「ボタン式」を?

習っていたアコーディオン教室の先生が突然持ってきたのがきっかけです。ボタン式は手の小さい人に向いているので、当時小学生だった私に「小春ちゃん、弾いてみる?」って。日本ではボタン式は珍しく、人と被らないものを極めるのが好きなので、今もずっとボタン式を愛用しています。

他の楽器に浮気はしなかったのですか?

様々な音楽に触れるうちにアンサンブルへの欲求が生まれてきたため、高校ではブラスバンド部に入部。「目立つソロが多いから」という理由でテナーサックスを担当しました。また、「とにかく自分のやりたい音楽を演奏したい」という想いから、学年代表のバンドマスターに立候補。着任したからには上手くなろうと毎日練習に励みました。

やがて、一部の部員を集め「マイノリティ・オーケストラ」というジプシーバンドを設立。オリジナル曲を演奏したり、公民館や商店街でポップスメドレーなどを演奏しました。

その頃、「自分で楽譜を書けば、自分が美味しいフレーズを担当できる」という理由で、編曲を始めたんです。楽典の知識も無く、試行錯誤しながら楽譜を書いていました。

その後、プロになるまでの活動は?

お金を稼ぐために、高校3年生から大道芸を始めました。東京都の大道芸人のライセンス「ヘブンアーティスト」を取得し、ソロ/バンドの両方で演奏活動をスタート。この活動の収入だけでアコーディオンを1台購入できた時は、これで生活できる!と自信を持てました。

大道芸では、有名な曲を演奏すれば多くの人に足を止めてもらえます。でも、オリジナル曲を演奏しないとプレイヤーとしての名前が残らない。「〇〇の曲を弾いていた人」で終わってしまうんです。大道芸人の活動を続けるうちに、アーティストとしての考え方を持つようになって行きました。

「お金を稼ぐには?」から「ファンをつけるには?」に考えをシフトし、やがてライブハウスでの演奏も行うようになりました。活動を通して成長を重ね、イベントにも呼んで頂けるようになり、今の事務所の方が見てくださっていたことから今に至ります。

 


 

譜面は作者の意図を伝える絶対的なもの
小春さんの直筆譜面
小春さんの直筆譜面
小春さんにとって、楽譜の必要性とは?

頭の中にあるハーモニーは、皆の共通言語で書かなくては伝わらない……という、ただそれだけの理由です。「楽しい曲を思いついた」と言っても、楽譜に書かないと皆で演奏できません。そのツールが五線なんです。最初は仕方なく楽譜の書き方を勉強していましたが、結果としてかなり楽譜を書くようになりました。

最近は楽譜を書かずに音源データでやり取りする人も多いですが「楽譜のあり方」とは?
楽譜の重要性を語る小春さん
楽譜の重要性を語る小春さん

楽譜って「私が死んだ後にも誰かに演奏してもらえる」という素晴らしいものですよね。私がいないと存在しない作品は、発展性が無いんです。

どこかの誰かが、誰が作った曲なのか知らなくても演奏してくれる。それをより遠くに届けられるのが楽譜です。音源として残すのも良いですが、プロ/アマチュア問わずみんなに演奏してもらえるのは、やはり楽譜だと思います。目に見えるデータとして紙に残るのは凄いですよね。

また、譜面は作者の意図を伝える絶対的なもの。私はとにかく「自分がやりたいことをやりたい」というタイプなので、譜面で指示するのがベストです。

伝言ゲームを失敗するように、音源を聴いてもらうだけでは曖昧な伝わり方をしてしまうことがあるんです。フレーズをちょっと簡単にアレンジされたり、勝手にお休みされたりと、意図していない演奏をされてしまう。だから、シンプルな裏打ちもベースラインもすべて楽譜に書いています。

普段は適当に弾いてますが、譜面にはやりたいことをいっぱい書くようにしています。日本語で書いたりもしますけどね(笑)

小春さんの楽譜は丁寧ですよね。

というか、ワガママなんです。きちんと指示しないと、プレイヤーの手癖が勝手に入ってきてしまうんですよ。「なんとなく」ではなく、「私の頭の中にあるこのフレーズを吹いてほしい」という明確な意図を伝えるための指示書です。

アコーディオンの譜面の特徴はありますか?
小春さんのフィナーレ画面
小春さんのフィナーレ画面

音色を切り替えるスイッチが本体についていて、その指示のための記号があります。

また、左手の指定も独特です。アコーディオンの左手側には、「ベース」が単音で鳴るボタンと、「メジャー」「マイナー」「セブンス」…とコードが鳴るボタンが並んでいます。左手の楽譜には、ベースラインの指示と、そのオクターブ上の音符の上に「M」「m」「7」のように記号書かれたコードボタンの指示がされています。

ギターのタブ譜のようなものでしょうか。全世界共通の表記です。……とはいえ、メロディの上にコードネームさえ書いてあればアコーディオンは弾けるんですけどね(笑)

 


 

Finaleは読みやすく、移調楽器もその場でプレイできる
フィナーレで『聖者の行進』の譜面を作成する小春さん
フィナーレで『聖者の行進』の譜面を作成する小春さん
手書きからコンピューターに移行したきっかけは?
小春さんの愛猫と共に
小春さんの愛猫と共に

2017年くらいのツアーです。普段、バンドは馴染みのメンバーがほとんどですが、そのツアーの途中で急遽トランペットのパートを増やし、演奏を初めての方にお願いすることになりました。短期間で譜読みして頂く「はじめまして」のプレイヤーに、いつもの汚い手書きの譜面を渡すわけにはいかない!……と思ったのがきっかけです。

楽譜ソフトの使用経験があるメンバーに相談し、複数の候補の中からFinaleを選択。ツアー中に購入し、25曲分のトランペットの追加パートを大急ぎで作ったんです。初めて触るFinaleに苦戦しながらも、ほとんど自分ひとりで仕上げました。

Finaleが便利だと感じるポイントは?

「移調楽器を実音で表示」の機能です。全部Key:Cで書いてから、ワンタッチで楽器別の移調譜にしてくれますよね。とっても便利だと思いました。これは手書きではできません。

それまではKey:Cの手書きの楽譜だったので、読み替えが得意でないプレイヤーは、各々が自分用のキーに書き換えて持参していました。そこで「Finaleで作って全員にそれぞれのキーで渡せば、その場で演奏できるんじゃない!?」って。本当に画期的だと感じました。

同じパート譜を、日によって違う楽器に吹いてもらう時にも便利ですね。今日はトランペット(B♭管)、明日はアルトサックス(E♭管)という場合にも一瞬で変換可能です。

Finaleで作った楽譜の品質の違いは感じましたか?

みんな読みやすそうにしていました。自分のやってほしいことを短時間で伝えるためには、楽譜は綺麗でなくてはいけません。

 


 

YouTubeに蛇腹談義シリーズを投稿したことで様々な出会いが
YouTubeを切っ掛けに誕生したアコーディオンキーボード「giabaranai」
YouTubeを切っ掛けに誕生したアコーディオンキーボード「giabaranai」
YouTubeを始めたきっかけは?

コロナウィルスの影響で暇になってしまったからです。ライブも何もかも延期になってしまって……。よく質問されるアコーディオンの話を動画にすれば、全国の方に一度に説明できると思い、「蛇腹談義」というシリーズを始めました。第1話はライブでよくお話している内容なんですよ。

今ではかなりの人気チャンネルですよね。

きっかけは「暇だったから」ではありますが、YouTubeを通して様々な出会いがありました。商品のテーマ曲の制作や、著名YouTuberとのコラボ、他にはアコーディオンキーボード「giabaranai」を開発してくれる人が現れたり。そしてFinaleなど……。様々な方に見て頂けて驚いています。

ありがとうございました。

 


 

「蛇足談義」Finale特別レッスン編

小春さんへ楽譜作成ソフトウェアFinaleの使い方を特別レッスンした「蛇足談義|譜面ソフトFinaleをマスターしたい!」の前編/後編が公開中です。昔は地獄の譜面だったと語る小春さんはフィナーレをマスターできたのか!?サックス奏者のオカピさんも特別出演です。

 

 

「蛇足談義」Finale活用編

動画概要より「聖者の行進」アコーディオン練習用楽譜DL可能です!

 

 


 

チャラン・ポ・ランタンNEW SINGLE『旅立讃歌』

書き下ろしの新曲「旅立讃歌」に加え、ライブでは変幻自在曲である「空中ブランコ乗りのマリー」とクライマックスに最適な「千秋楽」の過去曲2曲をセルフカバーした全3曲を収録。また、DVD/Blu-rayには昨年11月に東京キネマ倶楽部で実施した「本当は貴方たちの前で演奏したかったライブ2020」を収録。さらに、Blu-rayには昨年8月に行った初配信ライブ「8週連続配信リリース完走記念生配信!「その8曲歌いますライブ!」」も収録が決定、ボリュームたっぷりな内容となっています。

旅立讃歌

 

旅立讃歌の情報

  • SINGLE+DVD
    品番:AVCD-61074/B (本体価格¥3,500+税)
  • SINGLE+Blu-ray Disc
    品番:AVCD-61075/B (本体価格¥4,800+税)
  • SINGLE ※CD Only
    品番:AVCD-61076 (本体価格¥1,000+税)

ページTOPへ


 

関連記事リンク集

 

《プロのFinale活用事例:アーティスト別》

  • 都倉 俊一氏:作曲家/編曲家/プロデューサー “現場ではすぐにスコアを書き換えなくてはいけないことがある。するとパート譜の修正もたくさん必要になりますよね。その作業が、Finaleのおかげでとっても楽になったことが印象的でした”
  • 外山和彦氏:作編曲家 “手書き時代はスコアを切り貼りしたり苦労をしたものですが、Finaleを使うことで圧倒的に便利になりましたね。仕事場にはもう五線紙がありませんよ”
  • 吉松 隆氏:作曲家 “我々プロの作曲家にとっては、こと細かい調整ができるという面で、やっぱりFinaleなんですよね。Finaleは、車に例えるとマニュアル車みたいなものなんです”
  • 佐久間 あすか氏:ピアニスト/作曲家/音楽教育家 “Finaleは楽譜のルールを学習するためのツールにもなっているんだなと思います。楽譜が分かるようになれば、読む時の意識も変わります”
  • 栗山 和樹氏:作編曲家/国立音楽大学教授 “Finaleを使えば「バージョン2」を簡単に作れることは大きなメリットですね。特に作曲面でトライ&エラーを繰り返すような実験授業では、Finaleでデータ化されている素材は必須です”
  • 櫻井 哲夫氏:ベーシスト/作曲家/プロデューサー/音楽教育家 “Finaleの普及で、演奏現場では以前は当然だった殴り書きのような譜面はほとんど見られなくなり、「これ何の音?」などと余計な時間も取られず、譜面に対するストレスがかなり減りました”
  • 紗理氏:ジャズ・シンガー “ヴォーカルだと特に、同じ曲でもその日の気分やライブの演出によって、キーを変えたい時がよくあるんです。そんな時でもクリックひとつで移調できるわけですから、これはものすごく便利です”
  • 赤塚 謙一氏:ジャズ・トランペット奏者、作編曲家 “作る人によってレイアウト、線の太さ、フォントの選び方など好みがあり、手書きのように作った人の「らしさ」が表れます。この辺がFinaleに残されたアナログな良さかも知れません”
  • 本田 雅人氏:プロデューサー/作曲家/サックス奏者 “手書きでは本当に大変でしたけど、Finaleに慣れてきてからは随分と楽になって作業の効率は圧倒的に良くなりましたね。ビッグバンドとか吹奏楽とか、編成の大きな場合にはすごく助かります”

《プロのFinale活用事例:テーマ別》

《楽譜作成ソフトウェアの導入メリットを考える》

《Finaleの基本操作を学べるリソース》

  • 譜例で操作方法を検索:Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。
  • クイック・レッスン・ムービー:Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。

 

News letter from finale

ニュースレターを希望される方は、以下のフォームにメールアドレスを入力し登録ボタンを押してください。
バックナンバーはこちらからご覧いただけます。

※通信は日本ジオトラスト株式会社のSSLにより暗号化され保護されています。