TIPS 22. リードシートのテンプレートを活用
【対象グレード】Finale
今回は、Finale 27の付属テンプレートを使ったリードシートの作成方法をご紹介します。音楽制作のプロジェクトにおいて、楽曲構成を見渡せるリードシートを用意しておくと、何かとスムーズに進行できる利点があります。Finaleなら、こだわりをもった自分好みのリードシートを作成することができます。
1. テンプレートをダウンロード
2. DAWで作成したメロディーデータを活用
3. リハーサルマークと複縦線でわかりやすく
4. 反復記号を活用して短くまとめる
5. コードネームを入力
6. レイアウトする
7. 空白の小節を処理する
8. リズム表記と食い
9. こだわりのカスタマイズ(設定)
テンプレートをダウンロード
Finaleの起動パネルから、[version 27用テンプレート]をクリックすると、テンプレート集のページが開きます。
「起動パネルからテンプレート集ページを開く」
今回は、[3-1 メロディー譜、リードシート]から、[リードシート(手書き風)]の「Mac用「Windows用」どちらかのボタンをクリックしてダウンロードします。 今回の場合「01_04_リードシート(手書き風).musx」というファイルが、[ダウンロード]フォルダーなどブラウザで指定している階層にダウンロードされます。必要に応じて自分で管理できる場所にコピーや移動してもよいでしょう。
「多数のテンプレートが用意されている」
ダウンロードしたファイルを開くと、空五線のテンプレートが開きます。リードシート用に五線がひとつ、ほどよい間隔で配置されています。
<ヒント>:テンプレートを開いても操作を受け付けない場合は、起動パネルが開いたままではないか確認しましょう(起動パネル右上の×で閉じます)。
保存する際に、[ファイル]>[別名で保存...]を実行して、自分で把握できるファイル名に保存しなおしましょう。また、元はダウンロードしたファイルですので、保存場所がわからなくならないようにチェックしておきましょう。
「手書き風リードシートのテンプレートに自由に楽譜を入力していく」
あとは、音符や記号を入力して楽譜を完成させていきます。 次項からは、テンプレートに入力する際のちょっとした操作や、オリジナル設定に編集するポイントなどをピックアップして紹介します。
DAWで作成したメロディーデータを活用
すでにDAWで作業している場合は、そのデータを有効に活用したいものです、しかし、DAWからスタンダードMIDIファイル(SMF)で書き出してFinaleで読み込んだだけでは、満足な結果は得られません。
「SMFで読み込んだだけでは、なかなか実用的な楽譜にはならないもの」
そこで、メロディーパートの音符情報だけをコピーします。DAWから読み込んだファイルと、テンプレートの両方を開いておき、ファイル間で、音符情報だけをコピーします。 SMFから読み込んだファイルを、レイアウトや各種設定をすべて設定していくのは大変なものですが、これなら、テンプレートを一気に完成に近づけられます。
「右のSMFを基にしたファイルから、左のテンプレートにメロディーの音符情報だけをコピーすれば、一気に完成に近づく」
<ヒント>:DAWから書き出したSMFには、楽曲の構成やメロディを把握できるだけの、最低限のMIDIトラック(ノートデータ)があることを想定しています。また、メロディトラックをリアルタイム入力している場合は、DAW側でクオンタイズをかけたり、音符どおりのデュレーション(音価)に調整しておくとFinaleでの楽譜化が楽になります(楽譜化を想定したノート情報に修正しておきます)。 なお、SMFではなくMusicXMLでやりとりが可能な場合は、DAW側のコードトラックの情報もFinaleに流し込める場合があります(それらの機能をDAWが持っている場合に限ります)。
<ヒント>:既存のFinaleファイルからテンプレートに音符情報だけをコピーする場合は、メニューの[編集]>[ペースト対象項目の選択...]を開き、[音符/休符]にだけチェックを入れます。その後、コピー元のファイルでメロディーパートを全選択しておき、テンプレートにドラッグすると、音符情報だけがコピーされます(不要な記号をコピー時に排除するのに便利です。その後元に戻すのをお忘れ無く)。
「ペースト対象項目にチェックが入っている項目だけがコピーされる」
リハーサルマークと複縦線でわかりやすく
楽譜を編集する上でも、演奏者目線でも、楽曲構成を一目で把握できるリハーサルマークは重要です。リハーサルマークを入力するには、発想記号ツールで、Mを押しながらクリックします。自動でABC順で入力され、削除や挿入しても自動更新される便利な記号です。
サビ始まりでCから始めたい場合は、入力後に右クリックから[リハーサルマークの振り直し...]を選択すると、どの文字から始めるかを指定できます。途中でAから振り直すことも可能です。配置されたら、他の記号と重ならないようにドラッグして位置調整します。
また、複縦線も、構成を把握するのに役立ちます。縦線は選択ツールか小節ツールでその小節をハイライトしておき、右クリックから小節線>複縦線 を選択して変更できます。
「リハーサルマークや複縦線で構成をわかりやすく」
INTROなどの囲み記号は自作できます。今回は、流用できそうな記号を基にして、INTROを作成して、囲み図形を[長方形]で線幅 7 EVPU、[角を丸くする]を有効にして、半径 7 EVPUでカスタマイズしてみました。 ENDINGマークは、INTROを複製して文字列を変更するだけで完成です。
「リハーサルマークを自作」
反復記号を活用して短くまとめる
DAWではリピートやダルセーニョなどは使わないため、そのままだと長い楽譜になりがちです。反復記号を使えないか、進行を吟味しシンプルな楽譜にします。
ここでは、1番2番括弧や、ダルセーニョ、To Codaなどを使いました。手書き風のテンプレートなので、記号類もいわゆるリードシートらしい認識しやすい表記となっています。この時点で1ページか見開き2ページにするか、なども見据えながら調整していきます。
「完成形をイメージしつつシンプルになるよう反復記号を活用する」
<ヒント>:冒頭の完成図では、以下の編集を追加しています。
- 記号を丸や長方形で囲む
- 各記号を大きくするなどサイズ調整
- D,S. al Codaから「al Coda」をカットし、囲み図形追加
- ToCodaのCodaを図形に変更
- セーニョとコーダに、丸い囲み図形を追加
コードネームを入力
コードが必要な場合は、このあたりで入力しておきましょう。このテンプレートでは、コードネームも手書きのリードシートに合うフォントに設定されています。なお、コードツールを選択した際に左に表示される四つの▶のうち、左から二つ目を上下すると、リードシート全体のコード位置を上下させられます。記号との衝突を避けるには、個別にドラッグして移動します。 これで、記号と音符は入力が完了したので、次のレイアウトに進みます。
「手書き風のフォントが設定済みのコードネーム。左の▶で位置調整できる」
<ヒント>:設定によっては、コードの位置が小節線の上をまたぐ状態になる場合があり、いわゆる食った状態と見間違える恐れがあります。これは、コードネームの配置情報が、ハンドルに対して中央揃えになっているためであり、メニュー>コード>コードネームの左揃えにチェックを入れることで一気に解消できる場合があります。もちろん、個別にドラッグして位置調整もおこなえます。
「食ってる?食ってない?まぎらわしい表記はなるべく排除する。まずは左揃えを試す」
レイアウトする
読みやすさを追求するためにも、このあたりでレイアウトしてみましょう。ここでは、以下の作業をおこなっています。これらは、状況に合わせて変更したりオリジナルの工夫を盛り込みやすいところでしょう。
- 一段あたり4小節に統一することで構成を把握しやすくなります。
(ユーティリティメニューから、小節のはめ込みを実施します) - 二番括弧など、一段4小節の法則から外れる場合は、あえて右にスペースを作り明示すると、構成を把握しやすく親切なレイアウトになります。
(ページ・レイアウトツールで、組段の右端を中央付近までドラッグして調整しています) - 右ページのコーダの段(組段9)は、冒頭(組段1)の上マージンと同じスペースにして、コーダであることをアピールして視認性をアップしています。
(ページ・レイアウトツールで、組段マージ編集の[上]マージンを組段1と組段9で同じになるよう調整します)
「レイアウト次第で見やすさやプレイヤーの安心感は変わる。リードシートでこだわりたいところ」
空白の小節を処理する
ソロスペースやイントロ、アウトロなどは空欄にしたり、スラッシュにしたり、状況に応じて判断しましょう。プレイヤーに書き込んでもらうような、打ち合わせをともなう場合は、空欄がよろこばれるでしょう。
小節を空欄にするには、楽譜スタイルが便利です。 (選択ツールで範囲をハイライトしておき、右クリックから、[楽譜スタイル]>[楽譜スタイルの適用...]をクリックして、開いた画面で[03.Blank Notation:Layer1]を実行します)
小節に斜め線を入れる場合は、同じく五線スタイルで[01.Slash Notataion]を実行します。
<ヒント>:今回のテンプレートでは、楽譜スタイルの設定項目が英語ですが、それぞれ[01.スラッシュ表記(S)]、[空白の小節:レイヤー1(B)]となります。このように、テンプレート作成時の基となったファイル次第で英語表記となる場合がありますが、以下の図では、日本語訳が確認できます(デフォルトの新規ファイルでの画面です)。
「楽譜スタイルの名称」
リズム表記と食い
いわゆる食うリズムを明示するには、楽譜スタイルのリズム表記を適用します(あらかじめ通常の音符でリズムどおりに入力しておいて、範囲指定してから、楽譜スタイル[02.Rhythmic Notation](日本語表示[02.リズム表記])を適用します。 タイやアーティキュレーション・ツールで入力したアクセントやフェルマータなどは通常の音符と同様に割り付けられます。
「リズム指定する場合は、楽譜スタイルのリズム表記を活用」
こだわりのカスタマイズ(設定)
今回は、テンプレートからさらに以下の設定を追加しています。
- タイトルや作曲者名などのテキストフォントを「Finale Broadway Text」に変更して統一感を出しました。サイズも大きくしています。
(スコア・マネージャーでタイトルや作曲者名を入力した後に、文字ツールでメニューのキャラクタ設定...を開き、フォントやサイズを調整しました) - 小節線や複縦線、1番2番括弧の線など、線の太さを初期値よりも太くしています。
(今回は、ファイル別オプションを開き、小節線>細い線の線幅を 7 EVPU 設定、リピート記号の線は別扱いなので、同じくファイル別オプションの反復記号>細い線の線幅を 7 EVPUにしました。1番2番括弧の線も太くするため、反復記号の[反復記号の設定...]を開き、線幅を 5 EVPU にしました。また、括弧内の文字位置の水平位置を 18 EVPUにしてすこし左に寄せました) - 各種反復記号を丸や枠で囲み、サイズを大きくしました。また、D.S. al CodaはシンプルにD.S.に変更するなど、記述の変更もおこなっています。
(今回は、反復記号ツールで記号を右クリックして[反復記号定義の編集...]を開き、フォント設定]でサイズを調整したり、[枠で囲む]で[長方形]や[円形]を選択して、線幅を太くしたり角を丸くする設定に編集しました)
「さらにこだわりの微調整を施して自分流リードシートを完成させる」
これらは、好みでカスタマイズする数値などは様々かと思いますが、ちょっとした工夫でオリジナルのリードシートとなることでしょう。できたファイルをコピーすれば、他の曲で流用することもできるでしょう。 みなさまも、自分流リードシートのテンプレートを確立してぜひご活用ください。
(執筆:近藤隆史)
関連記事リンク集
《Finaleの基本操作を学ぶために》
- 譜例で操作方法を検索(Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。)
- クイック・レッスン・ムービー(Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。)
- Finaleを学ぶ(Finaleを学ぶための記事一覧です。)
《TIPS記事一覧》
- TIPS 1. 五線をまたぐ連桁を簡単に作成する方法
- TIPS 2. 同じ発想記号を複数のパートに連続複製する方法
- TIPS 3. 入力済みの記号やアーティキュレーションを瞬時に変更する方法
- TIPS 4. ハーモニーからトップ・ノートのみを簡単に抽出する方法
- TIPS 5. 入力済みの音の高さを簡単に変更する方法
- TIPS 6. 記号類だけを他のパートにコピーする方法
- TIPS 7. 曲の途中や末尾で不完全小節を作る方法
- TIPS 8. プレイバック時の臨場感を簡単に調整する方法
- TIPS 9. 複雑なコードネームを入力する際の時短テクニック
- TIPS 10. プレイバック時に、連続する16分音符をシャッフルさせる方法
- TIPS 11. 曲の途中で楽器を変更(持ち替え楽器)する方法
- TIPS 12. 部分的にプレイバックをしてサウンドをチェックする方法
- TIPS 13. チャンネルを分けてプレイバックをより精細に
- TIPS 14. 目からウロコのショートカット集「高速ステップ入力編」(Mac版)
- TIPS 15. 組段セパレータでスコアをより見やすく
- TIPS 16. 独自のショートカットキーを割り当てる
- TIPS 17. 日本式のギターTAB譜を作成するには
- TIPS 18. 複数曲を含む楽譜を作成する(ピアノ譜の例)
- TIPS 19. 曲番号を五線の左に表示する
- TIPS 20. 複数曲で曲名をパート譜に表示させる
- TIPS 21. レイアウトの便利な小技集
- TIPS 22. リードシートのテンプレートを活用