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「知る」— Finale最前線


“ウィントン・マルサリスのプロジェクトを影で支えるFinale”

2012年の9月27日から30日に、ジャズ界の大御所であるウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)と、ガース・フェイガン・ダンス・カンパニー(Garth Fagan Dance Company)の共同プロジェクトによる舞台作品が上演されました。
カンパニーを率いるガース・フェイガンはジャマイカ出身で、アフロ・カリビアンのパッションをコンテンポラリー・ダンスに結びつけ、独特の振付で知られる舞踊界の巨匠です。一般の方にはミュージカル『ライオンキング』の振付担当、と説明した方がわかりやすいかも知れません。

今回の公演では、『グリオ・ニュ−ヨーク(Griot New York)』(抜粋・1991年初演)と 『ライトハウス/ライティング・ロッド(Lighthouse/Lightning Rod)』(世界初演)の2作品が上演されました。舞台前方下のピットに配されたウィントン・マルサリス・セプテット(七重奏)による生演奏に沿ってスリリングなダンスが繰り広げられるステージ。全ての公演でチケットは即ソールドアウト。その期待を裏切らない超一流のパフォーマンスは聴衆を魅了し、熱狂のうちに幕を閉じたといいます。

音楽の作曲・編曲はウィントンによるものですが、実はFinaleは縁の下の力持ちとして熱狂のステージを作り上げたその一端を担っていたのです。

Finale開発元のMakeMusic社の広報担当者スコット・ヨーホ(Scott Yoho)氏は、ウィントン・マルサリス・セプテットの指揮を執るジョナサン・ケリー(Jonathan Kelly)氏にインタビューを敢行。この作品が完成に至るまでのプロセスや裏話を伺うことに成功しました。そのインタビューの一部をご紹介しましょう。

スコット:今回世界初演の 『ライトハウス/ライティング・ロッド』は、2日間程度で曲が作られたと聞きました。それまではウィントンの頭の中以外には、楽譜やデモなど何もなかったのですか?

ジョナサン:大体そのようなものだね。私は最初のリハーサルの2日前にウィントンに呼び出されたんだ。そして彼は「よし、こいつを始めようか」と言って、私たちはそれから48時間ぶっ続けで仕事に没頭しました。

スコット:ウィントンは、完成されたスケッチを用意していたのですか?それともその場で作曲していったのですか?

ジョナサン:まさに後者だね。ウィントンはピアノの前に座って、次々と手書きで曲を楽譜に起こしていく。ウィントンが書き上げる楽譜は三段譜です。しかしその楽譜には、誰がどこを演奏するのかが明白に記されている。そして私がFinaleを使って7人編成のフルスコアに仕上げていくんだ。ウィントンが1曲目を仕上げては私に渡し、私がスコアを作り終わった頃にはウィントンも次の曲を上げてくる。そんな共同作業で、8曲もの曲をたった48時間で作り上げたんだ。

スコット:恐ろしく効率的なワーク・フローですね!

ジョナサン:この10年くらいは、こんなスタイルで曲作りをしている。数十年前では考えられなかったやり方だろうね。シンフォニーや聖歌隊のコーラスを作曲した時も、エリック・クラプトンやポール・サイモンとの共演で新曲を書いた時にも、Finaleが無かったら成し得なかっただろうね。

スコット:そのようにして出来上がった曲をレコーディングしてガース・フェイガンに送り、そしてその録音でダンスの振付やリハーサルを進めたということですね?アドリブの部分はどうするのでしょうか。

ジョナサン:そう。この音楽はアドリブのセクションが含まれます。その部分にも、もちろんダンスの振付が入ります。公演は生演奏だから、本番で事前に渡した録音と全く違う内容の音楽が演奏されてしまったらどうなるか。せっかくの振付が全く意味を成さなくなってしまう。

スコット:どうやってその問題を解決したのでしょう?

ジョナサン:私は、ウィントンのアドリブを出来る限り採譜してFinaleで残しておいたんだ。これにはウィントンもびっくりしていたよ。昔は採譜も大変なものだったけど、Finaleならより早く簡単にできる。プレイバックして確認もできるしね。私はベース奏者なのだけど、ベースやピアノでウィントンの超絶的なソロを弾いて確かめることなんてできないしね。Finaleのプレイバック機能はありがたいよ。

スコット:私もFinaleのプレイバック機能は重宝しているのですが、あなたのようなレベルの方にもそう思っていただけるのはとても励みになります。では最後に、Finaleが作品作りにどのような役割を果たしているか、教えていただけますか?

ジョナサン:Finaleは世のミュージシャンにとって確実に進歩をもたらした。私は常々、曲作りはダイヤモンドが生成される工程に似ていると思っているんだ。あらゆる条件がぴったりと揃わなければ、炭素はダイヤモンドにはならない。ちょっとでも温度や圧力が違っていたらそれは欠陥品どころか炭の塊にしかなっていなかっただろう。曲作りもそれに似ていて、例え良いアイディアが思い浮かんでも、それを実際に楽譜に書き起こして具現化させて初めて皆が共有できる財産になる。もちろん、私たちが常にダイヤモンドばかりを掘り当てていると言うつもりはありません。しかし、Finaleがあるおかげで私たちはいつでもダイヤモンドを狙うチャンスを得ているということになるのです。

スコット:ありがとうございます。このインタビューの実現と、ウィントンの自筆譜とスコアを提供してくれたことに感謝します。

(インタビュー終わり)

なお、YouTubeに公演に関連する動画が公開されていますので、そのうちいくつかをご紹介します。

<リハーサルの様子>



<ドキュメンタリー>

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